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国際規格の解説

■IEC82079-1:2019の解説シリーズ■
第2回 2012年版からの変更点の解説 その1

株式会社明祥のテクニカルライター、水野です。
前回から始まりましたIEC82079-1:2019の解説ですが、第2回目の今回は、2012年版からの変更点について、その概要を解説したいと思います。

前回の記事で、IEC82079-1は2012年に初版が発行され、2019年に大幅改訂されたとお伝えしましたが、「これは同じ規格なのだろうか?」と思えるほどの大きな改訂だと感じます。
この変更点を解説すると情報量が非常に多くなりますので、今回はどんな変更があったのか、その概要と重要なポイントを解説いたします。

なお、本記事は、この規格についての当社の見解・解釈を解説したものです。
規格の正確な内容・記述については、原文を参照してください。

IEC82079-1:2019は、2012年版から何が変わった?

IEC82079-1:2019のまえがきに、旧版からの変更(技術的変更)として9つの事項が挙げられていますが、これらを踏まえた抑えておくべき主な大きな変更点は次のとおりです。

  1. IECとISOのデュアルロゴからIEC、ISOとIEEEのトリプルロゴの規格となった。
  2. 規格名が変更された。
  3. 全体の構成・構造が見直され、再構築された。
  4. 情報管理プロセスに関する要求事項が新たに規定された。
  5. 使用情報の構造に関する要求事項が新たに規定された。
  6. 使用情報の制作に必要なスキル・知識についての要求事項がより詳細に規定された。

1から3の変更点は、規格全体における変更点です。
3の変更点については、規格の構成・構造がほぼすべて変わっているため、2012年版と2019年版を横並びで見て、逆に同じ箇所はどこなのか?を探すのが大変だと思ってらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

4から6の変更点は新たに追加された要求事項になります。
特に4の情報管理プロセスに関する要求事項は、この規格の適合をうたう上でも重要なポイントになる、特に重要な変更点になります。

今回の記事では、1から4の変更点について解説してまいります。

IEC、ISO、IEEEのトリプルロゴ規格

IEC82079-1:2012は、IECとISOのデュアルロゴ規格でした。
IEC(International Electrotechnical Commission、国際電気標準会議)は、電気・電子技術分野を活動領域とする国際的な標準化団体です。
一方のISO(International Organization for Standardization、国際標準化機構)は、電気・電子および電気通信以外のすべての分野を活動領域とした国際的な標準化機関です。

この活動領域が異なる2つの団体が合同で開発したことで、IEC/ISOのデュアルロゴ規格となっています。

それに対しIEC82079-1:2019では、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers、アイ・トリプル・イー)がその改訂に加わりました。
IEEEは主に電気工学、電子工学、情報工学やその関連分野を活動領域としています。

これにより、IEC82079-1は、より幅広い領域における標準化ための規格として位置づけられることになったと言えます。

規格名の変更

続いて、規格名の変更を解説しましょう。

IEC82079-1:2012および2019の規格名は次のとおりです。

2012:
Preparation of instructions for use – Structuring, content and presentation -Part 1:General principles and detailed requirements
(使用説明の作成 ― 構成,内容及び表示方法 ― 第1部:一般原則及び詳細要求事項)

2019:
Preparation of information for use (instructions for use) of products – Part 1: Principles and general requirements
(製品の使用情報(使用説明)の作成 ― 第1部:原則及び一般要求事項)

この変更の意図は、「使用説明」という用語を「使用情報」に変更するというところにあります。

「使用説明」の本来の意味合いは、使い方の説明に留まらず、製品を安全に、なおかつ効率的に使用するために必要な情報すべてを含みます。
一例を挙げると、製品の取扱説明書はもとより、取付・設置手順書、保守・メンテナンス用資料などのマニュアル類や、包装上に印刷されたラベル、ウェブ上のコンテンツを含むカタログなどの製品説明が該当します。

しかし、実際には「使用説明=操作説明」というように、規格の要求事項が「操作説明」に限定されてしまう可能性があります。
これは、IEC82079-1が、機械安全の各規格から取扱説明書の作成に関する規格として参照されているという側面もあるかと思います。

こうした規格の適合範囲が限定されてしまうことを避けるために、2019年版では「使用説明」が「使用情報」に変更されました。
なお、用語の定義としては「使用説明」と「使用情報」は同じ意味であることをうたっています。

2019年版の規格の内容を読み解くと、規格の対象となる製品、情報の種類や制作工程、使用情報の制作の関係者などが、より幅広く包括的に改訂されたことが分かります。
「使用情報」への変更は、「製品の使用者に対して提供すべきすべての情報」に対する要求事項であるという、規格のスタンスを色濃く表す変更だと言えるのではないでしょうか。

全体の構成・構造の見直しおよび再構築

IEC82079-1:2019のまえがきには、規格の適用の促進と情報の検索の容易さを図るため、構造を再構築した旨が述べられています。
2012年版と2019年版を並べて見てみると、前述のとおり「ほとんど同じところがないのでは?」と思うほど再構築されています。

まず、全体の構成で見てみましょう。

規格の構成

2012年版は1節から7節および附属書A~Eで構成されています。
一方2019年版は、1節から10節および附属書Aで構成されています。

単純に見ると、2019年版では3節追加され、附属書B~Eがなくなったように見えます。
しかし、2012年版と2019年版でタイトルが同じ節は、IEC規格共通の項目である「適用範囲」、「引用規格」、「用語および定義」を除くと「原則」のみです。
その「原則」も節のタイトルが同じというだけで、その中身の構造は大きく変わっています(下の図参照)。

「原則」の違い

例として、この「原則」の中でもほぼ同じタイトルである、2012年版の「製品の一部としての使用説明」と2019年版「製品の一部としての使用情報」の内容を見てみましょう。
まずは2012年版の内容です。

2012の内容

続いて2019年版の内容です。

2019の内容

この通り、要求事項がかなり変わっていますね。
では、2012年版の要求事項はなくなってしまったのでしょうか。

実は2012年版の後半3行は、2019年版では別の項(5.2.4 対象製品の安全な使用)に記載されています。

2019の内容2

このように、2019年版では新たに追加された要求事項があり、かつ2012年版から踏襲された内容においても、全体的に構造が見直され2019年版として再構築されております。
したがって、2019年版の要求事項を把握するには、「2019年版を頭からしっかり読む」ことが非常に大事なことになります。

情報管理プロセスについての要求事項が新たに追加

2019年版への改訂における変更点で最も重要な内容は、「第6節 情報管理プロセス」が新たに追加されたことです。
これにより、製品の供給者の責務として情報管理プロセスの実施が求められるようになりました。

2012年版では、附属書Dにて制作プロセスについての手引きが提供されていますが、規格本文にはプロセスに対する要求事項はありませんでした。

この要求事項の追加により、IEC82079-1の要求事項は大きく「使用情報に対する要求事項」と「情報管理プロセスに対する要求事項」の2つに分けることができます。
使用情報に対する要求事項は「使用情報はどのような内容にすべきか」というもので、情報管理プロセスに対する要求事項は「使用情報はどのようなプロセスで制作すべきか」というものになります。

また、この情報管理プロセスの追加に伴い、次の要求事項も大幅改訂、または新規追加がなされています。

大幅改訂:
要求事項を満たすということは、必然的に「要求事項を満たしているということを証明する」必要があります。
そのため、2019年版では情報管理プロセスにの要求事項に加えて、要求事項を満たしていることを評価するため方法についての規定が大幅に改訂されています(第4節 使用情報に対する要求事項の達成)。

新規追加:
使用情報の作成の関係者(テクニカルライターや翻訳者含む)に求められるスキルや知識についても、より詳細な内容が要求されています(第10節 専門的力量)。

では、情報管理プロセスとは何かについて、少し掘り下げてみましょう。

IEC82079-1:2019は、使用情報は次の4つのプロセスで制作することを求めています。

  1. 情報の分析および計画
  2. レビュー,編集及びテストを含む設計及び開発
  3. 制作および配布
  4. 維持,保守及び改善

この4つのプロセスのなかでも、特に1の「情報分析および計画」については多くの要求事項があり、重要な位置づけであることが感じられます。

この「情報分析および計画」の内容を確認すると、例えば、使用情報の対象者についての分析、その分析に基づいてどういった体系や媒体で使用情報を提供するか、といった使用情報を制作する初期段階に行う企画に関する要求事項が規定されています。

また、この情報の分析および計画のプロセスにおいて、使用情報の対象となる製品の設置、操作や保守におけるハザードを考慮しなければならないことも述べられています。
そのため、製品の供給者に対し、製品のハザード分析、および回避方法の評価を求めるとともに、製品の残留リスクを使用情報に含めることも要求しています。
この内容を見ると、製品の使用者の安全を守るという意図が強く感じられます。

続いて、2の「レビュー,編集及びテストを含む設計及び開発」ですが、ここでの要求事項は、表現の設計やテンプレートなどの開発、使用情報の元となる情報の収集や編集、そしてレビューやテストによる使用情報の評価に対するものです。
特にレビューについて重点的に述べている印象を受けます。

この情報管理プロセスの1と2が要求事項の大半を占めており、新たに追加された要求事項の中でも特に重要となる事項だと言えるのではないでしょうか。

第2回の解説はここまでとなります。

いかがでしたでしょうか。
IEC82079-1の2012年版から2019年版の変更点はかなり多く、どう説明をすればよいか悩ましい場面もありましたが、まずは全体的な変更点について解説させていただきました。

次回は、本記事では触れなかった使用情報の構造、専門的力量など、2019年版で新しく追加された要求事項について解説いたします。

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